日本の水を守る

いま私たちが良質な水を日常的に飲むことができたり、利用することができるのは、先人たちが山や森、そして水源を守り育ててくれたおかげです。

今を生きる私たちもまた未来のため、子孫のために日本の山や森、水源を守っていく必要があります。

国の姿勢が未来の水を作る

水を守り、山や森、水源を守るには水質や採取水量のチェックや保全活動、規制の制定、さらには
・土地の売買に対する監視、規制
・木々の伐採や各種開発行為への監視、規制

なども必要になります。

国土交通省 水管理・国土保全局水資源部が令和3 年2 月にとりまとめた資料「地下水関係条例の調査結果」によると、

令和2 年10 月末日時点で地下水に関連する条例として
・47 都道府県で86 条例
・609 市区町村で748 条例

が制定されています。

これらの条例では
・地盤沈下
・地下水量の保全や地下水涵養
・地下水質の保全
・水源地域の保全

などの目的で制定されており、これに違反した場合に罰則が定められているものも多くあります。水や山や森はこれらの条例によってある程度守られるでしょう。

ただし、こうした条例がある地域や、国や都道府県から「保安林」に指定されている森林以外では、木々を伐採してゴルフ場を造ったり、井戸を掘り地下水をくみ上げたり、温泉を掘りあててリゾート施設を造成することなどもかなり自由にできます。

これが、周辺の自然環境との調和が取れる範囲で行われるのであれば問題はありません。しかし源流域や水源林おいて調和を乱すレベルの開発や活動が行われてしまうと、水質や水量の変化をはじめ、採取される水や水源にいつかダメージがあらわれてきます。

私は、自治体が制定する条例だけでなく、この源流域や水源に関わる山、森林、地下水の保全、売買、開発について国の法律を定める必要があると考えます。

平成26 年4 月に公布された「水循環基本法」はその先駆けともいうべき法律で、水循環に関する施策について基本理念を明示したものとなっています。

この基本理念を土台としてどう具体的な施策に展開していくかが今後の水政策、水行政のカギとなっていくことでしょう。

外国資本が入る時代

2010 年代に入ると森林や水源を含む土地が外国人や外国法人に売られるケースが増えてきました。

農林水産省が平成30 年(2018 年)にとりまとめた資料「外国資本による森林買収に関する調査の結果について」によると、平成18 年から30 年にかけて居住地が海外にある外国法人、または外国人と思われる者による森林買収は
件数:223 件
森林面積:2,076haでした。

同じ期間において、国内の外資系企業と思われる者による森林の取得は
件数:162 件
森林面積:4,711ha

上の2 ケースを合計すると
件数:385 件
森林面積:6,787ha

となります。

これは、プロ野球で使われる標準的な野球グランド(両翼:100m、中堅:122m)5000 個分を超える面積です。

これを「多い」とみるのか、「たいしたことはない」とみるかは人によって意見が異なるでしょう。

ただこの面積は毎年増加している現状を考えると、外国人、外国法人に対しても森林や水源の保全について働きかけ、共に水を守っていく意識を高めてもらう必要があると感じています。

資料「外国資本による森林買収に関する調査の結果について」には平成30 年の1 年間に外国法人や外国人に買収された森林の場所や取得者の住所地、面積、利用目的についてまとめた以下の表が掲載されています。

表を見ると、中国、カナダ、アメリカ、タイ、フィリピン、オーストラリア、英領ヴァージン諸島、シンガポール、韓国、英国と、10 の国や地域の個人や法人が購入しています。しかし実際はもっと多くの国の個人や法人が日本の森林を手に入れているだろうと私は予想しています。

表の「利用目的」の欄は多くが「資産保有」や「太陽光発電」と記載されています。ただし「不明」も多く、すでに「水採取」などの形で利用されているケースがあっても不思議ではありません。

日本人や日本の法人と同様に、外国資本によって買収された土地や森林、水源についても水や森林、水源を守るための法律や条例を遵守させ、違反した場合には罰則を科す。

そうした積極的な姿勢が国や自治体に求められます。

水保全への新しい施策

水を守るために、私は次のような施策も面白いのではないかと考えています。

それは、外国資本が買収した森林、土地からの水採取など水利用に対し税金を課す、というものです。

適正な税金を納めさせ国や自治体はこれを水保全のために活用することで外国人や外国法人も一緒になって水や水源、森林を守っていくのです。

「外国人や外国の法人にだけ課税する?」「そんなことできるのか」と感じる人も多いことでしょう。

しかし、UAE(アラブ首⾧国連邦)のドバイでは、2023 年6 月以前は石油とガスの採掘、精製企業と外国銀行の支店のみに法人税が課せられていました。

このドバイにおける税の仕組みを研究することで、日本においても新しい税制度が構築できると考えます。

日本の水をブランディングする

そしてもう1 つ、私は日本の水をブランディングしその価値を国内、そして世界に発信していくことで日本の水を守ることを考えています。

現状、世界的に知られた日本の水はまだありません。ブランド化はこれからです。

参考になるのはアメリカのリキッド・デス(Liquid Death)社が販売する水「リキッド・デス」。

2019 年に販売が開始されたアルミ缶入りの飲料水(または炭酸水)で、リキッド・デス社は3 年目にして年商190 億円、時価総額が1010 億円と急成⾧している企業です。

水「リキッド・デス」はおいしさや健康といったこれまでのミネラルウォーターのイメージとは大きくちがっています。缶にはドクロが描かれパンクロックやメタルバンドのようなデザイン。ビールやエナジードリンクの缶のようでもあります。

いま、アメリカでも若い世代がアルコールを控えるようになっていますが、そういう人でもクラブやバー、パーティー会場にいるときなどにカッコよく飲めるようにしたとのこと。

同時に地球環境のことにも配慮しておりペットボトルではなく水平リサイクルの比率が高いアルミの缶を採用しています。

また売り上げの一部をプラスチック汚染対策に取り組む環境保護団体に寄付しているのです。

リキッド・デス社は水を「おいしさ」や「健康」といった軸ではなく「カッコよさ」と「環境」という2 軸で打ち出しブランディングに成功しました。

日本の水はこのマネをする必要はありません。しかし従来の「おいしさ」だけでなく、ちがう軸で水を打ち出す戦略は大いに参考にはなります。

「ブランディング」は私が最も得意な分野。
日本の水についてブランディングを行っていこうと考えています。

■参考文献:
・「外国資本による森林買収に関する調査の結果について」農林水産省

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